女将塾の塾生は女性のみであることから、女性メンバーならではのマネージメントについて教えてほしいと頼まれることが多いのですが、私自身はメンバーが男性だから、女性だからとあまり意識したことはありません。ですので、次に述べるようなノウハウがはたして、女性特有のマネージメントかどうかは定かではありませんが、女将塾的マネージメントについて何点かお話ししようと思います。

女性同士をペアにして働くと、ややもすると、お互いをつぶし合ってしまったり、過剰に競いすぎる傾向があるようです。そこで女将塾では、こういった個人の競い合いだけでは、宿のサービスが一向にレベルアップしないのだという教育を徹底しています。前回のコラムでも言及したように、24時間365日稼働するのが旅館ですので、お客様をチームでおもてなしする大切さを日々実感できるよう心がけています。
たとえば、夕食時に本来であればアワビ料理を出さなくてよいお客様に出してしまい、出さなければいけないお客様の食材がなくなってしまったというトラブルが起きたとします。私たちが真っ先にするのは、板場も含めたチーム全体で、この事態に対しお客様をどうフォローできるか、可能性を模索すること(叱咤や原因究明はそのあとの話です)。今からアワビを再手配すべきか、翌朝お出しすべきか……。ミスを犯してしまった塾生がお客様に正直に謝罪すると同時に、用意した選択肢をお客様のご意向で選んでいただき、翌朝のフォローとなれば、別の塾生がこのお客様に対し宿としてなすべきことを行い、お帰りいただくときにまた別の塾生がお客様になにかプレゼントを考え、お出しするといった連携プレーなどがその典型だと思います。
2つめは、こういった全員のレベルアップのために、塾生同士がお互いの長所や短所を率直に言い合える場や雰囲気作りを心がけています。この環境を作る上で気をつけなければいけない点は2つあります。まずは、その目的、つまりチームワークによる宿のレベルアップのための活動の一環であることを周知させることです。この前提がないとただの悪口や好き嫌いのおしゃべりに堕してしまうからです。もう1つはこの話題をみんなでオープンに行うということです。1:1で行うとか、人づてに自分の話を耳にするといったことは絶対に御法度です。万一、そのような話題が流れてきた場合には、かならず情報の発信者に直接尋ねるよう指導しています。これらのことをルール化しておけば、女性だけでもじめじめとした職場になることはありません。
3つめは、人名入りの組織図を作り、開示するということです。女将塾では社会人経験のある女性を採用しています。ですので、自分より若いボスがいて、たしかに宿のオペレーションについてはよく知っている。でも敬語の使い方や、電話の応答は私の方がうまい、などといった、少々ねじれたスキル関係になるのですが、明確な組織図の提示をもって、双方の立場、責任を明確にし、連絡などの情報の流れ、宿のオペレーションの流儀を明らかにしています。
などなど、これまで偉そうなことばかり話してしまいましたが、実は、ギリギリの人数で業務を遂行させるというのがてきぱき働いていただく一番有効な手段なのではという気もしています。女将塾では常に最小限の人員でプロジェクトをおこなっているので、そもそも、おしゃべりに夢中になったり、さぼっている暇がないというのも事実です(笑)。
男性ですと、役職や肩書きなどにモチベートされる方も多いと思いますが、女性の場合は、いかに自分の思いを仕事で表現できるのか、というクリエイティブな面が重要なのではないかと感じています。