中小企業は最小限の人員で経営しなければならないため、日々の多忙さに流されてしまい、真剣に経営を考える場がおろそかになりがちです。しかし、これまで述べてきたように、経営を取り巻く環境は驚異的なスピードで変化しているため、目先の仕事に追われ続けているうちに、「気がついたら時代遅れになっていた」というような事例が数多く見うけられます。
このような事態に陥らないためには、できれば月に1回は自社の現状を様々な角度から見直し、「改善しなければならない課題は何か」を真剣に検討する場をもちたいものです。「月次会議ならウチでもやってるよ」と言われる経営者の方も多いと思われますが、会議が真に現状分析と課題検討の議論の場となっているか考えてみてください。
私が見聞きした経験では、次のような課題をお持ちの中小企業さんが多いようです。
(1)月次の会計資料の数値、例えば売上や利益などの数値につき、前年対比などの検討は行われるが、具体的な改善策の検討にまで踏み込めない。
損益計算書や貸借対照表などの数値は活動の成果(結果)ですから、確かにこれらの数値を分析・検討することは重要ですが、単に前年と比較して「良くなった」「悪くなった」を見るのではなく、「何故そのような結果となったのか」さらには「どうしたら改善されるのか」といった具体的な検討まで踏み込むことが重要です。また、その原因究明ばかりしていると、「誰が悪かったのか」という犯人探しの場となってしまいがちです。具体的な解決策までさらにもう一歩議論を進めないと意味がありません。
(2)経営TOPの方のお話が多く、他の方は聞いているだけで議論がほとんどない。
規模が小さいうちは、ある程度TOP−DOWNでビジネスが動いていくのはやむを得ませんが、「参加者が課題に対しどのような考えを持っているか」などを把握するためにも議論の場が重要となります。もちろん、最終決断は経営責任を負う経営者がくだすことになりますが、できるだけ多くの人の意見や考え方に耳を傾けたうえで結論をだすことも重要です。また、社内の会議だけではなく、たまには私たち税理士のような外部の人間も交えて幅広く議論することも良い方法だと思います。
(3)経営TOPの方が聞きたくないであろう情報(報告)はできるだけ議題にあげず、会議を無難に終らせる傾向がある。
ある程度規模が大きくなると、TOPと現場との間にミドル・マネジメント層が入って正確な情報伝達を阻害してしまうことがあります。この傾向は特にワンマンといわれる社長さんのもとでおこりやすいようですが、TOPは常に現場の実情を観察するよう心がけなければなりません。
(4)できるだけ安易な課題を取り上げ、難題は先送りする傾向にある。
経営環境が大きく変化している今日では、やり方を抜本的に変えないといけないケースもでてきますが、あまりに大掛かりなことだとどうしても後回しにしたくなるのが人情です。課題の解決には必ず優先順位をつけ、「いつまでに、誰が、何を、どう変える」ということを具体的に決めなければ大きな話ほど前へ進みません。
(5)目標が明確でないのでいつも結論がでず、単なる報告会で終ってしまう。
「ウチの会社はいつまでにこういう会社になる」という明確なビジョンが示され、そのための目標(数値指標)が明示されていれば、その目標値と比較して現状はどのような状況で、どのような行動をおこせば目標に近づくのかがわかります。具体的な目標値やそれを達成するための行動計画をもっていないと、結論がでない報告会で終ってしまいます。
大手企業と違い中小企業経営者は、営業や現場、経理や総務などすべての分野を管理コントロールしなければならないのでお忙しいと思います。しかし、だからこそ1ケ月に1回ぐらいは日常業務から離れ、真剣に自社の現状を見直し、課題をみつけて、その解決方法を検討する時間(場)を作ってください。
私の寄稿は今回で終わりとなります。皆様の健全経営を心よりご祈念申し上げます。
拙い文章を最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。